お酒を飲む女性が増えている。
厚生労働省研究班が2008年に酒を飲む人の割合を年代別に調べたところ、
20~24歳の男性は83.5%で5年前(90.4%)より下がったのに対し、
同年代の女性は90.4%で、5年前(80.0%)より高くなった。
全年代を通じて初めて男女の飲酒率が逆転した。
調査した久里浜アルコール症センターの樋口進院長は
「女性が社会に進出したことを背景に、男性と同じように、仕事の後に飲む女性が増えた」
と分析する。
ただ、「同じ量を飲んでも、女性は肝臓などの内臓に影響が出やすいので注意が必要だ」
と警鐘を鳴らす。
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アルコールを分解するスピードは、肝臓の大きさに比例する。
一般的に男性より体が小さい女性は、肝臓も小さいので、同じ量を飲んでも
男性よりアルコールを分解するのに時間がかかり、内臓に負担がかかる。
さらに、女性は体脂肪が多い分、水分量や筋肉が少ない。
これもアルコールの分解に不利になり、男性より血中の濃度が高くなりやすいという。
女性はアルコール依存症になるのも早い傾向がある。
樋口さんが06年に国内にある依存症の治療施設54カ所に入院する人の年齢を調べたところ、
男性は50代が34%と最も多かったのに対し、女性は30代が37%を占めた。
男性は肝硬変などの肝臓の病気や慢性膵炎(すいえん)を患うことが多いのに対し、
20代から30代の依存症の女性は摂食障害、自殺を考えている、といった
精神疾患との関係が深いのも特徴だ。
「夜、眠るために毎晩飲んだり、休日、昼間から一人で飲んだりするようになると、
依存症になる恐れがある」
と慶応大看護医療学部の加藤真三教授は指摘する。
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お酒の適量はどの程度か。
国が健康作りの指針として定めた「健康日本21」は、
「節度ある適度な飲酒」を純アルコールで1日平均20グラム程度としている。
樋口さんは女性の場合、半分の10グラム程度が目安という。
純アルコール量は、飲んだ酒量(ミリリットル)にアルコール度数(パーセント)をかけ、
さらに0.8をかける。
俗に言う「酒に強い人」は、アルコールの分解が早い人が多い。
なかなか酔わないので、酒量が増え、弱い人よりも内臓に負担がかかる可能性があるという。
酒量が多いかなと思う人は、まず普段の量を把握することが、酒量を減らすきっかけになる。
「スケジュール帳にその日飲んだ酒量を簡単にメモするだけでも、
飲んでいるうちに、多いなと気づいて抑えるようになる」と樋口さん。
飲み方を変えることも大切だ。一人で空腹のまま飲むのでなく、誰かと夕食を共にして、
会話を楽しみながらゆっくりとしたピッチで飲むのがいい。(宮島祐美)
◆相談ナビ
久里浜アルコール症センターのサイト(http://www.kurihama-alcoholism-center.jp/)は
世界保健機関の診断基準や食道がんの危険性を調べるテストを掲載。
アルコール健康医学協会のサイト(http://www.arukenkyo.or.jp/)も女性の飲酒に詳しい。
朝日新聞 2011年5月5日